
こんにちは、管理栄養士のてんぱぱぱです。
今回は、アミノ酸のひとつ「アルギニン」の摂取についての論文をご紹介します。
病院では、特に創傷治癒や褥瘡改善、術前栄養などで活躍しているアルギニンですが、今回の論文は「長期摂取の安全性」についてまとめたものになります。
こちらの記事は、日本ニュートリション教会からの情報を元に作成しています。
そもそもアルギニンって何?

まずアルギニンについての論文を紹介する前に、アルギニンとは何なのか基本的な知識を確認しておきましょう。
アルギニンとは、天然に存在する条件付き必須アミノ酸の一つです。
条件付き必須アミノ酸とは、次のように説明できます。
アルギニンには、免疫反応の活性化、細胞増殖の促進、コラーゲン生成促進などの働きがあり、外傷・褥瘡・感染などの侵襲下や成長期においては、充分な補給が望ましいとされています。
美容目的に使用する方も多いです。

私の病院では、褥瘡の方や手術を控えている方にアルギニン強化食品を提供しています。
論文

はじめに
栄養ドリンクやスポーツニュートリションの定番成分ともいえるアルギニン。
アミノ酸のひとつで、体内で代謝されるときに産生する一酸化炭素を介して、成長ホルモンの分泌促進、免疫機能の向上、脂肪代謝の促進などが期待されています。
習慣的に栄養ドリンクを摂取するような場合、長期摂取の影響はあるのでしょうか。
学術誌AminoAcids.ではアミノ酸の用量を3水準に設定し、90日間の長期摂取試験を取り上げています。
研究班は30g/日で90日摂取でも、有害事象はなく安全性が確認できたとしています。
ただし、海外の論文は意深く読む必要があります。
日本人との体格差や食習慣、遺伝学的背景なども考慮して、参考情報として研究報告を活用しましょう。
抄録
「健常成人におけるアルギニンサプリメントの安全性」
先行する動物研究やヒトを対象にした臨床研究では、L-アルギニン(アルギニン)を栄養補給すると、白色脂肪が減少し、健康増進に有効であることが示唆されている。
しかし、これまで、成人のアルギニンの長期摂取の安全性については十分に明らかとなっていない。
そこで、本研究の目的は、健常であるものの、BMIが25.0以上の過体重および肥満を有する成人のアルギニンの長期経口摂取の安全性および忍容性を評価するための無作為化プラセボ対照臨床試験を行うこととした。
研究方法
試験では142人の被験者全員が、アルギニンを 1日あたり12g摂取を使用して7日間のウォッシュアウト期間をもうけた。
介入期間では耐用性において適格と確認された被験者101人(男性45人・女性56人)を無作為に3群に割り付け、各郡それぞれ、一日あたり0g、15g、30gアルギニン(医薬品級Arg-HCl)を90日間摂取した。
アルギニンは飲料に混合され、少なくとも一日2回に分けて摂取された。
評価方法
介入開始日および介入最終日に被験者の血圧測定、身体検査、血液検査および、24時間蓄尿を行い、(1)アミノ酸、グルコース、脂肪酸および関連する代謝産物の血清濃度、(2)腎臓、肝臓、内分泌および代謝指標を評価した。
結果
その結果、アルギニンの血中濃度は、一日あたり0g群と30g群を比較すると経口アルギニン摂取量の増加に比して増加していることが男女ともに認められた(P <0.05)。
また一日あたり30gのアルギニン摂取は、男女のいずれにおいても遊離脂肪酸の血中濃度を低下させるとともに、女性では収縮期血圧および血糖値の減少も認められた(P <0.05)。
生理学的検査および生化学的検査の結果によると、被験者には有害事象は生ぜず、15gおよび30gのアルギニン摂取の安全性が確認できた。
本研究により、肥満気味の成人において、1日あたり30グラムのアルギニンの90日間の長期摂取は安全であると考えられた。
キーワード
アルギニン、健康、栄養、肥満、安全性、サプリメント
出典
Amino Acids. 2018 Jun 1. [Epub ahead of print]
URL: https://doi.org/10.1007/s00726-018-2594-7
感想

この論文では、
「肥満気味の成人において、1日あたり30グラムのアルギニンの90日間の長期摂取は安全であると考えられた。」
と結論づけています。
しかし今回の論文は、「健常であるものの、BMIが25.0以上の過体重および肥満を有する成人を対象」としたものです。
海外の論文であり、

日本人にそのまま当てはめて考えるのは難しい論文だな・・・
という印象でした。
抄録の中に、アルギニン以外の栄養量、特に総たんぱく質量がどのように設定されていたのかが明確になっておらず、気になるところです。
又今回の評価項目にも含まれている腎臓についてですが、アルギニンに関わらず、たんぱく質に総じて言われているのが、たんぱく質の過剰摂取は腎機能に悪影響を及ばすという事です。
腎機能障害がある方については、体の状態に合わせたたんぱく質量の制限について日本腎臓学会や日本糖尿病学会などで具体的な数値設定がされていますが、「健常者がどの程度たんぱく質を摂取すると、腎機能に悪影響を及ぼすのか。」というのは明確な回答は出ていません。
(そもそも悪影響があるのかという基本的なところから知りたい・・・)
今後は、そういった内容も踏まえて、日本人を対象とした研究が行えるといいと思いました。
アルギニン強化商品ってどーいうのがあるの?
最後にアルギニンを強化した商品についてご紹介します。
サプリメント、ドリンク、ゼリーなど様々な商品があります。

参考にしてくださいね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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