がん栄養療法 がん患者に必要な栄養とは

病院栄養士の仕事
てんぱぱぱ
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こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。

今回はがんの栄養療法について、特にがんに必要な栄養素についての情報をお伝えします。

がん(悪性新生物)による死亡数は、第二次世界大戦以降、全国では一貫して増え続けています。

がんは昭和56年(1981年)以降、死因第1位となり続けているのです。

 

 

そのような背景もあり、平成28年度の診療報酬改定では栄養指導の加算対象に「がん」が加えられました

 

従来の【外来・入院・在宅患者訪問栄養食事指導料】

厚生労働大臣が定める特別食※を必要とする患者
※ 腎臓食、肝臓食、糖尿食等

平成28年度からの【外来・入院・在宅患者訪問栄養食事指導料】

  • 厚生労働大臣が定める特別食を必要とする患者
  • がん患者
  • 摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者
  • 低栄養状態にある患者

 

つまり、がんの患者さんに対する栄養療法の重要性が認められたわけです。

では、がんの患者さんにはどのような栄養療法が有用なのでしょうか?

今回はそんな疑問にお答えしていきたいと思います。

がんと低栄養の関係

がん患者の低栄養、体重減少はよく認められる病態です。

特に、消化器がん・肺がん・頭頸部がん患者では半数以上に認められます。

低栄養は、予後の悪化とも関連しており、いったん栄養障害をきたすと、治療の効果は低下し、有害事象(副作用)を容易に発生させます。

治療の中止を余儀なくされれば、がんの増殖を招くという悪循環に陥ってしまいます。

低栄養治療の副作用の増悪更なる低栄養治療継続困難予後の悪化
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がんの栄養療法の基本は低栄養予防・改善であるといえるでしょう。

 

低栄養の原因

がん患者の低栄養は、治療に伴う栄養障害「がん関連性低栄養」と、がん特有の病態による栄養障害「がん誘発性低栄養」の2つに分けられます。

(治療に伴う)がん関連性低栄養

  • 治療の副作用
  • 手術侵襲
  • 心理的要因

(病態に伴う)がん誘発性低栄養

炎症による代謝障害

 

「がん関連性低栄養」と「がん誘発性低栄養」は、がんが進行するにつれて相乗的に作用し、がん患者の予後に大きな影響を及ぼすと考えられています。

てんぱぱぱ
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では次に「がん関連性低栄養」と「がん誘発性低栄養」についてもう少し詳しく説明していきます。

 

がん関連性低栄養

がん治療によりさまざまな副作用があらわれ、経口摂取が低下しやすくなります。

体重減少をきたしているがん患者では、1日の栄養摂取量が、健常時より300kcal程度少なくなっていると言われています。

がん3大療法

がん3大療法は、①手術療法、②放射線療法、③薬物療法です。

 

①手術療法
近年では、術前化学療法や放射線療法を行うこともあり、栄養障害が増悪している場合があります。
術前の栄養状態は、術後の回復に非常に大きく影響します。
栄養補助食品や経管栄養なども含めた栄養補給法の検討をし、必要栄養量の確保に努めましょう。
また術前から栄養障害がある場合は、術後もなるべく早い時期から経腸栄養を再開するべきとされています。
術後は、経口摂取がすすまず栄養状態が回復しない症例も多くみられるため、定期的な栄養状態の評価や適切な対応が求められます。
②放射線療法
放射線療法の副作用は、放射線照射部位・量・治療期間、薬物療法などほかの治療法との併用により異なります。
副作用の多くは急性に起こり、照射開始後2~3週で出現し、照射終了後2~3週で軽減します。
放射線治療を受ける際には、十分なエネルギーとたんぱく質の摂取が重要で、早い段階で栄養指導を受ける事の有用性も報告されています。
③薬物療法
【化学療法】
抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃し、増殖を抑える治療法です。
全身に散らばったがん細胞に作用させることが出来ますが、活発に増殖する正常細胞にも影響が及びやすく、さまざまな時期に副作用が現れます。
特に食欲不振や嘔吐などの消化器症状の頻度が高く、その副作用でより体重が減少し、栄養障害が引き起こされます。
【分子標的療法】
最近では、がん細胞だけに作用する分子標的薬の開発が進み、実用化されているものが増えています。
正常な細胞への影響が少ないとされていますが、薬剤ごとに特徴的な副作用が知られているので注意が必要です。
【ホルモン療法(内分泌療法)】
がんの成長を促すホルモンの分泌を抑えたり、ホルモンががん細胞に作用するのを抑えたりすることで、がんの増殖を阻害する治療法です。
【免疫療法】
免疫が本来持っている機能を回復させ、がんを抑えようとする治療法です。
がん細胞が免疫にかけているブレーキを外す作用を持つ「免疫チェックポイント阻害剤」の有効性が、いくつかの種類のがんで示されています。
副作用は少ないと報告されていますが、個人差大きく、いつ生じるか予測がつかないため注意が必要です。

代表的な副作用と対策

①口腔粘膜炎
抗がん剤や放射線が口の粘膜の細胞へ直接作用したり、白血球減少に伴う局所感染症の影響により起こります。
頻度や重症度に差はありますが、がん患者の少なくとも50%に発生するといわれています。
また、分子標的薬による治療が増加するにつれて、口腔内の問題も増加し、さらに対応が難しくなってきています。
口腔粘膜炎は、口腔内の痛みや出血、熱いもの・冷たいものがしみるなどの症状があります。
②口腔内乾燥
抗がん剤や放射線療法により、唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥した状態になります。
口腔内が乾燥すると、味覚が変化したり、食事がしにくくなったりします。
また、感染リスクの増加や経口摂取量の低下など、さまざまな悪影響がでてきます。
進行がん患者の9割近くが中等度以上の口腔内乾燥を自覚していると言われており、がん患者の多くは口腔内乾燥を苦痛に感じています。
<①口腔粘膜炎・②口腔内乾燥の対策
1.治療開始前の歯科受診・口腔ケア
細菌が増殖すると、口腔粘膜炎が悪化しやすくなります。
感染源となりやすいむし歯や歯周病などは、がん治療を開始する前に治療しておきましょう。
お口のケアをしておくと、口腔粘膜炎や口腔内乾燥の症状を軽くすることが出来ます。
2.口腔内を清潔に保つ
がん治療中は体力が低下して、歯や歯茎に細菌が感染しやすいので、痛みや感想がなくても、口腔内は清潔にしておきましょう。
3.保湿
がん治療中は、唾液腺の働きが弱まって口腔内が乾燥しやすく、粘膜に傷ができやすくなります。
症状を緩和するため、こまめにうがいをして乾燥を防ぎましょう。
保湿剤なども有効です。
4.定期的な口腔の評価
がん治療終了後も口腔内を清潔に保ち、むし歯や歯周病予防のため、定期的に歯科を受診しましょう。
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口腔内が乾燥していると、義歯がうまく合わず、粘膜を傷つけやすくなります。
水で濡らす、軟膏などを塗布してから装着するなど工夫しましょう。
義歯の不具合は放置せず、歯科で調整してもらいましょう。

 

口腔内トラブルにより食事がしにくい場合は、次のような工夫をしてみましょう。

  1. 硬い食べ物は避け、柔らかくて飲み込みやすいもの(ゼリーやプリン)にする。
  2. 食べ物の温度は一肌程度に冷ます。
  3. 味付けは出汁をしっかりとって薄味にする。
  4. 口腔内を乾燥させないように、飲料水や飲むゼリーなどを常備しておく。
③味覚障害
舌にある味覚を感じる味蕾(みらい)細胞が抗がん剤によって障害されたり、抗がん剤による亜鉛の吸収低下により亜鉛が不足したりすることで、味覚障害が起こりやすくなります。
食欲不振による経口摂取量の減少や、口腔内が乾燥しやすくなることも原因の1つです。
<③味覚障害の対策
1.亜鉛の補給
亜鉛は、粘膜を修復する作用や粘膜を保護する作用があり、味を感知する味蕾細胞の申請に必要な栄養素です。
亜鉛不足は、味覚障害の原因になるだけでなく、免疫力を低下させ、皮膚炎・口内炎なども起こしやすくなります。
2.食事の工夫
味覚障害のある時は、においにも敏感となることが多いため、においの強い食品は控えます。
また少し冷ましてから食べるとにおいが軽減されます。
④下痢
薬物療法の副作用で生じる下痢は主に2つに分類されます。
1.蠕動運動の活発化による下痢
薬物療法により、消化管の運動を調節する副交感神経が影響を受けて蠕動運動が活発になり下痢が起こると考えられます。
治療を開始した日から数日後に症状が現れます。
2.粘膜障害による下痢
薬物療法により消化管粘膜が障害を受けたり、白血球減少時に腸管感染が起きたりすることで下痢が起こると考えられます。
一般的に治療開始後10日目~14日目に現れます。
<④下痢の対策
食事の工夫
  1. 香辛料、脂肪を多く含む食品、食物繊維の多いもの、濃い味付けの料理を控えましょう。
  2. 下痢により多量の水分を失うため、こまめに水分補給をしましょう。
  3. プロバイオティクス食品(ビフィズス菌など)を摂取し、腸内環境を整えましょう。

 

⑤便秘
抗がん剤により、排便を促す蠕動運動が起こりにくくなり、便秘になることがあります。
また、抗がん剤によって起こる吐き気を止める制吐剤や、抗がん剤治療に対する精神的ストレスなども便秘の原因となる場合があります。
<⑤便秘の対策
  1. 出来る範囲で体を動かしましょう。
  2. こまめに水分を摂取しましょう。
  3. 食物繊維(特に水溶性食物繊維)やオリゴ糖を多く含んだものを食べましょう。
  4. 排便環境を整えましょう。(便意がなくてもトイレに行くなど)
  5. お腹をマッサージしましょう。
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薬物療法中の下痢や便秘は、食欲低下やQOLの低下だけでなく、抗がん剤の減量や投与期間の延長など、治療の質を低下させるといわれています。

下痢止めや緩下剤などのお薬を併用したほうが良い場合もありますので、医師や看護師に相談するようにしましょう。

 

がん誘発性低栄養

「がん誘発性低栄養」を代表する病態は、「がん悪液質」と言われます。

がん悪液質は、「単なる栄養補給では改善できない、骨格筋の喪失を伴う栄養障害」と定義されます。
悪液質は、がん患者のほぼ半数に見られ、またがんに限らずCKD(慢性腎臓病)、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、AIDS(後天性免疫不全症候群)、うっ血性心不全などの慢性消耗性疾患に伴う病態でも多くみられます。
がん悪液質は、QOLの低下のほか、がん治療効果の減弱、副作用のリスク増大、生存期間の短縮などの要因にもなります。
また、がん患者の死亡原因の3分の1は悪液質によるものと考えられています。

飢餓と悪液質の違い

体重減少だけ見ると、悪液質は飢餓と同様と思われがちですが、がん悪液質では、骨格筋の喪失と炎症を伴い、安静時エネルギー消費も亢進する点が異なります。

飢餓悪液質
体重減少減少
脂肪組織減少減少
骨格筋維持減少
炎症たんぱく質の合成維持増加
安静時エネルギーの消費減少増加

 

がん悪液質のステージ分類

がん悪液質は、「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」という3つのステージに分類されます。

「前悪液質」は、明らかな悪液質の症状は呈しませんが、代謝異常が軽度ながらすでに始まっている状態で、前悪液質の段階から早期介入が推奨されています。

一方、「不応性悪液質」は、高度代謝障害をきたした終末期の状態で、不可逆的な栄養障害を有する悪液質の状態と定義されています。

 

前悪液質

  • 集学的な(薬物・運動・栄養・心理療法など)早期介入が必要とされる
  • 過去6か月間の体重減少≦5%
  • 食欲不振、代謝異常

悪液質

  • 集学的な(薬物・運動・栄養・心理療法など)早期介入が必要とされる
  • 経口摂取不良
  • 全身性炎症を伴う

<悪液質の診断基準>

  1. 過去6か月間の体重減少>5%
  2. BMI<20、体重減少>2%
  3. サルコぺニア、体重減少>2%

上記1.2.3のいずれかに該当

不応性悪液質

  • 緩和的治療を主体とする
  • 悪液質の症状に加え、異化亢進し、抗がん治療に抵抗性を示す
  • PS(パフォーマンスステータス)不良。WHOの基準でPS 3または4
  • 予測生存期間<3か月

 

がんにおける炎症

がんが生体内に存在することにより引き起こされる炎症反応は、悪液質における代謝異常の大きな要因です。

がん細胞からは、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)が分泌されます。

炎症性サイトカインは骨格筋減少(筋たんぱく質分解亢進、筋たんぱく質合成抑制)、脂肪分解・脂肪褐色化代謝異常(栄養利用効率低下)、食欲抑制などの影響を与え、体重減少・低栄養につながります。

 

必要とされる栄養素

EPA(エイコサペンタエン酸)

代謝異常と炎症は密接な関係があると言われており、炎症をコントロールするためには免疫栄養療法が注目されています。

n-3系脂肪酸の1つであるEPAは、炎症性サイトカインの産生を減少させるといわれており、除脂肪体重(筋肉量)の維持が期待されます。

EPAには、ただ単に炎症を抑制して悪液質を改善するのではなく、衰弱していた全身の免疫機能を再び高める可能性があると考えられています。

EPAを中心とした栄養療法により、QOLの改善およびがん治療をよりスムーズで効果的なものにする事が期待されます。

 

たんぱく質

進行性のがん患者ではたんぱく質の合成抑制・分解亢進が生じています。

がん患者では、早期より骨格筋たんぱく質の減少が認められることが特徴的です。

たんぱく質は筋力を維持するうえで欠かせない栄養素です。

特にBCAA(分岐鎖アミノ酸)は、たんぱく質の合成を促進し、分解を抑制する働きがあると言われています。

また、運動は筋たんぱく質の合成を促進すると言われており、運動に合わせて、しっかり栄養を摂ることが重要です。

特に運動後(リハビリ後)に積極的にたんぱく質とエネルギーを摂取すると、筋たんぱく質の合成に有用であると考えられています。

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人間の体内では合成されないため、食事からとる必要のある必須アミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種を総称して分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼びます。

たんぱく質についての基礎知識を学びたい方はこちら↓
誰でもわかるように簡単に「たんぱく質」を説明する 栄養初心者編

 

運動療法

がん患者にとって運動は、がん治療に耐えうる体力をつけることができるほか、気分転換など精神面での効果も期待できます。

<運動療法に期待できる効果>

  1. 倦怠感の減少
  2. 筋肉量および骨量の低下の軽減
  3. 生活の質(QOL)の向上

どのような運動が適切かは、個人の状態や治療の状況を考慮しながら調節する必要がありますが、ストレッチを中心とした週2~3回の運動からまずはスタートしてみましょう。

 

エネルギー

がん患者のエネルギー消費は多くなる傾向ですが、慢性炎症の程度や治療による影響などにより異なります。

食事摂取量が低下していると感じる場合には、出来るだけ体重の変化や普段の食事量を意識してみましょう。

しかし、食事がとれない事に対して過度に心配する必要はありません。

あまり食事という観念にとらわれずに、好みの食べ物を無理のない程度に食べてみましょう。

<食欲がない時の食事のポイント>

  1. 好きな食べ物を無理のない程度に食べてみる
  2. 盛り付けを工夫する(少量ずつ、品数を増やす)
  3. 気分が良い時に自分に合った味付けや食べ物を探してみる
  4. 栄養補助食品を利用する

栄養補助食品は少量で高栄養が摂取できるので、特に食欲がなくて食事が食べれない時には有効に活用しましょう。

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少量で高栄養が摂れる商品についてはこちらの記事でもご紹介しています。

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カルニチン

カルニチンはアミノ酸の一種で、脂肪酸をミトコンドリア内部に運搬し、エネルギーを産生させる役割を有する重要な栄養素です。

筋肉に多く含まれているため、筋肉量が低下している方(サルコぺニア)では体内のカルニチンが低下することが報告されています。

カルニチンは、がん患者の80%が欠乏していると言われており、カルニチン投与が、がん患者の全身倦怠感を改善するという報告もあります。

がん患者に対するカルニチン単独投与の有効性は確立されていませんが、EPA製剤やステロイド治療などと組み合わせることにより、亢進していた基礎代謝量が減少、除脂肪体重(筋肉量)が増加し、さらにGPS、PSが改善するという報告もあります。

カルニチンは、肉類に多く含まれているため、肉類の摂取が少ない方は特に体内のカルニチン量は低下しやすいと言われています。

また加齢に伴い合成能が低下すると言われており、積極的な摂取が望まれます。

コメント

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