COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の適切な栄養管理とは

病院栄養士の仕事
てんぱぱぱ
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こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。

今回は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養管理について説明していきます。

 

私の病院でも呼吸器外来があり、栄養士は外来につかせてもらっています。医師が栄養指導が必要と判断した際に、すぐに対応できるようにスタンバイしているのです。

COPDの患者への治療には栄養管理が必要不可欠です。

ではCOPDの方の栄養管理は、どのような事に気を付ける必要があるのでしょうか?

今回はそんなところをポイントを絞って説明して行きたいと思います。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)ってどんな病気?

 概要

COPD は、たばこの煙などに含まれる有害物質に長期間曝露されることにより肺が持続的な炎症を起こし、呼吸機能の低下などを起こした状態です。

2001年に行われた調査では、日本における患者数は約530万人にのぼると推定されています。男女別患者数は、日本では女性よりも約2.5倍男性のほうが多いとされています。

日本人の死因10位であり、肺炎や肺がんなど重篤な肺疾患を起こす危険性も持っています。そのため慢性閉塞性肺疾患では、早期発見と早期治療の実施が重視されています。

原因

鼻や口から取り込まれた空気は、気管を通って肺へと送りこまれます。肺の中にある肺胞では、血中に酸素を取り込むと同時に、体内にある二酸化炭素の排出を行なっています。

慢性閉塞性肺疾患では、肺胞と末梢気道(肺胞につながる細い気管支部分)が炎症を起こしてしまうため、呼吸器症状が出るようになります。

肺に炎症を起こす主な原因は次の通りです。

<肺に炎症を起こす主な原因>

  1. たばこの煙に含まれる有害物質
  2. 大気汚染
  3. α1-アンチトリプシン欠損症(遺伝的要因)

このほか、胎児期や新生児期にたばこの煙にさらされる環境にあると、肺の成長が妨げられ、慢性閉塞性肺疾患の発症リスクが高くなると考えられています。

症状

慢性閉塞性肺疾患の主な症状として、咳と痰運動などをしたときに生じる息切れ(呼吸困難)の2つが挙げられます。

慢性閉塞性肺疾患では、肺胞と末梢気道で慢性的な炎症が生じるため、肺にたまった空気を吐き出しにくくなります。空気の十分な排出ができなくなると、次第に肺の中に空気が溜まり息を吸い込むのも難しくなります。その結果、運動時に息切れ(労作性の呼吸困難)を起こすようになります。

 

COPD患者における体重減少の要因

COPD患者には栄養障害が認められることが多く、日本では気腫型COPD患者の約70%に体重減少がみられます。

COPD患者は、代謝が亢進するにも関わらず、食事摂取量は低下しがちになるため、エネルギー必要量がエネルギー摂取量を上回り、低栄養状態に陥りやすくなります。

体重減少はCOPD患者の生命予後を大きく左右するため、早期から定期的な栄養状態のスクリーニングを行い、必要な場合には食事指導を始めとする栄養療法を行うことが重要です。

 

<エネルギー必要量の増加>

健常者の呼吸消費エネルギーが36~76kcal/日であるのに対し、COPD患者の呼吸消費エネルギーは、約10倍の430~720kcal/日が必要であり、安静時エネルギー消費量が増大します。

また、全身性炎症や内分泌系の変容に伴い、エネルギー代謝が亢進しています。

 

<エネルギー摂取量の減少>

肺の過膨張(横隔膜の位置低下)により、食事をすると満腹感や呼吸困難感が起きやすく、食欲も低下する為、摂取エネルギーが減少します

 

<MNA-SF(簡易栄養状態評価表)>

継続的な栄養状態のスクリーニングには、MNA-SF(簡易栄養状態評価表)が便利です。

MNA-SFは、高齢者の栄養評価における有用性が報告されている評価表MNAのうち、最初の6項目を用いた栄養障害スクリーニングツールです。

栄養状態を最大14ポイントのスクリーニング値で評価します。

  • 12-14ポイント:栄養状態良好
  • 8-11ポイント:低栄養のおそれあり
  • 0-7ポイント:低栄養

 

COPD患者の栄養療法のポイント

COPD患者は健常者よりもエネルギー必要量が増加していますが、呼吸困難感や腹満感のために食欲も低下している場合が多いので、無理なく十分なエネルギーを摂取することが重要です。

それでは食事指導のポイントを説明していきましょう。

 

①安静時エネルギー消費量(REE)の亢進を考慮し、予測REEの1.3~1.7倍のエネルギーを摂取するよう指導する。
1日総消費エネルギー量のうち、REEに70%、食後代謝(DIT)に15~20%が充てられ、残りが身体活動に用いられます。
COPD患者は、代謝が亢進しているために健常者よりも多くのエネルギーを摂取する必要があり、エネルギー摂取目標量としては、患者の予測REEの1.3~1.7倍程度が推奨されています。

 

<実際に計算してみよう>
  • 安静時エネルギー消費量(REE)は基礎エネルギー消費量(BEE)×1.2に相当するとされています。
  • BEEを算出する式として一般的に用いられているのがHarris-Benedictの式です。
男性:BEE(kcal/day)= 66.5+13.75×体重(kg)+5.00×身長(cm)- 6.78×年齢
女性:BEE(kcal/day)= 655.1+9.56×体重(kg)+1.85×身長(cm)- 4.68×年齢

 

これを踏まえて、身長170cm、体重60kg、年齢35歳、男性のCOPD患者のエネルギー摂取目標量を計算してみましょう。

BEE=66.5+13.75×60kg+5×170cm-6.76×35歳=1524.9kcal(1525kcal)

REE=1525kcal×1.2=1830kcal

エネルギー摂取目標量=1830kcal×1.3~1830kcal×1.7=2379kcal~3111kcal

 

答え:身長170cm、体重60kg、年齢35歳、男性のCOPD患者のエネルギー摂取目標量は、2379kcal~3111kcal

てんぱぱぱ
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これをみると、いかにCOPD患者の必要エネルギー量が多いかがよくわかりますね。

 

②食事の回数を増やして1回の食事量を減らすように指導する
COPD患者は、一度にたくさんの食事を摂ることが難しかったり、少量でも肺が圧迫されて呼吸状態が悪化するリスクもあります。
そのため、食事は高エネルギー、高たんぱくを基本に1日5~6回に分けて少しずつ摂るように指導します。
また呼吸筋の機能維持に必要になるリン、カリウム、カルシウム、マグネシウムも積極的に摂取する必要があります。
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少量高カロリーの栄養補助食品なども活用しましょう。こちらの記事でおすすめ商品をご紹介してます。↓

 

③嚥下障害のある患者には、嚥下機能に合わせた食品物性を提案する
COPD患者で嚥下障害に問題を抱える方は多く、患者の約65%が主観的な嚥下障害を訴え、約49%の患者で有意な嚥下障害を認めることが分かっています。
嚥下機能に合わせて、とろみをつけるなど食事を食べやすい形にすることで食事摂取量を増やせる可能性があります。
また少量でエネルギーや栄養素を補給できる食品を併用することも効果的です。

 

包括的リハビリテーションについて

呼吸リハビリテーションは、「呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入」と定義されており、呼吸筋や下肢を鍛える運動療法を中心に、日常生活動作の訓練や呼吸法の練習、栄養療法などを組み合わせて行います。

COPD患者では呼吸消費エネルギーが亢進しており、運動することで呼吸量が増加すると、健常者よりも多くのエネルギーを必要とします。

摂取エネルギーが不足すると、エネルギー源に筋タンパク質を利用することで体重減少や筋肉量の減少につながってしまうため、呼吸リハビリテーションにおいて、こまめな栄養補給を欠かさず行うことが重要です。

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