
こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。
今回は銅についてポイントをまとめていきたいと思います。
こちらの内容は、「日本人の食事摂取基準2020年版」と「日本ニュートリション教会 サプリメントアドバイザー資料」等から要点をまとめています。
銅(Cu)とは
銅とは微量ミネラルのひとつで、原子番号29、元素記号Cuの遷移金属元素です。
成人の生体内に約80 mg 存在し、約50% は筋肉や骨、約10% は肝臓中に分布します。
働き
銅は、約10 種類の酵素の活性中心に結合して、次のような働きをします。
主な働き
- エネルギー生成
- 鉄代謝
- 細胞外マトリクスの成熟
- 神経伝達物質の産生
- 活性酸素除去
- コラーゲンやエラスチンの生成
- 免疫力を高める
こんな人におすすめ
- 貧血ぎみの人(ヘモグロビンと鉄の結合を手助けする)
- 動脈硬化を予防したい人(血管壁を強化するコラーゲンやエラスチンを生成する。活性酸素を除去する。)
- 骨粗鬆症を予防したい人(骨を強化するコラーゲンやエラスチンを生成する)
- 風邪を予防したい人(免疫細胞のエネルギー代謝に関わる酵素の構成成分となり、免疫力を高める)
消化、吸収、代謝
食事から摂取される銅の吸収には2つの経路があります。
- 2 価銅イオンが、二価金属トランスポーター1 と結合して吸収される。この吸収は、鉄、亜鉛と競合する。
- 十二指腸において2 価から1 価に還元された銅イオンが、小腸粘膜上皮細胞の微絨毛の刷子縁膜に存在する銅トランスポーター1と特異的に結合して細胞内へ取り込まれる。
吸収された銅は、門脈を経て肝臓へ取り込まれ、銅依存性酵素やアポセルロプラスミンなどへ渡されます。生成したセルロプラスミンは血中へ放出されます。
吸収された銅の約85% が肝臓から胆汁を介して糞便へ、5% 以下が腎臓から尿中へ排泄されます。
細胞内の過剰な銅は毒性を示すため、体内銅の恒常性は吸収量と排泄量の調節によって厳密に
維持されています。
なかでも肝臓を中心とした排泄系の意義は大きく、過剰な銅は、再吸収されない形態で胆汁を経て便へ排泄されます。
必要量(日本人の食事摂取基準2020年版)
日本人の食事摂取基準2020年版では、銅について推定平均必要量、推奨量(0才児は目安量)、耐容上限量(18歳以上のみ)が設定されています。
- 推定平均必要量:50%の人が必要量を満たす量
- 推奨量:ほとんどの人(97~98%)が必要量を満たす量。推定平均必要量を用いて算出される。
- 目安量:栄養状態を維持するのに十分な量。十分な科学的根拠がなく「推定平均必要量」が算定できない場合に算定する。
- 耐容上限量:健康障害の危険がないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
- 目標量:生活習慣病の予防を目的に目標とすべき摂取量。
成人男性
(18~74歳)
- 推定平均必要量:0.7mg/日
- 推奨量:0.9mg/日
- 耐容上限量:7mg/日
(75歳以上)
- 推定平均必要量:0.7mg/日
- 推奨量:0.8mg/日
- 耐容上限量:7mg/日
成人女性
(18歳以上)
- 推定平均必要量:0.6mg/日
- 推奨量:0.7mg/日
- 耐容上限量:7mg/日
(妊婦 付加量)
- 推定平均必要量:+0.1mg/日
- 推奨量:+0.1mg/日
(授乳婦 付加量)
- 推定平均必要量:+0.5mg/日
- 推奨量:+0.6mg/日
欠乏症
銅欠乏症には、先天的な銅代謝異常であるメンケス病と後天的なものとがあります。
伴性劣性遺伝疾患であり、血液中の銅とセルロプラスミン濃度の減少、肝臓や脳の銅量の低下が起こります。
主な症状
- 知能低下
- 発育遅延
- 中枢神経障害
原因には、摂取不足、吸収不良、必要量増加、損失増加、銅非添加の高カロリー輸液施行、低銅濃度のミルクや経腸栄養などがあります。
主な症状
- 鉄投与に反応しない貧血
- 白血球減少
- 好中球減少
- 骨異常
- 成長障害
- 心血管系や神経系の異常
- 毛髪の色素脱失
- 筋緊張低下
- 易感染性
- コレステロールや糖代謝の異常
上記のような条件がなければ、銅は色々な食品に含まれているため、通常の食事を摂取していればほとんど不足することはありません。
過剰症
通常の食品において過剰摂取が生じる可能性はありません。
しかしサプリメントの不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性があります。
又銅過剰症のウイルソン病は、劣性遺伝疾患であり、肝臓、脳、角膜に銅が蓄積します。
主な症状
- 肝機能障害
- 神経障害
- 精神障害
- 関節障害
- 角膜のカイザー・フライシャー輪
生活習慣病との関連
- 銅欠乏は、貧血や高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、リポたんぱく質の酸化を惹起することが報告されています。
- 過剰な銅は、活性酸素種の生成を促進して酸化ストレスの要因となり、肥満や高血圧、糖尿病、心疾患、腎不全の悪化に関わると考えられています。
多く含む食品
広く様々な食品に含まれていますが、特に甲殻類、貝類、ナッツ類に豊富に含まれています。
主な食品
まとめ
今回は銅についてまとめました。
要点は次の通りです。
- 微量ミネラルのひとつで、原子番号29、元素記号Cuの遷移金属元素。
- 主な働きは、①エネルギー生成、②鉄代謝、③細胞外マトリクスの成熟、④神経伝達物質の産生、⑤活性酸素除去、⑥ラーゲンやエラスチンの生成、⑦免疫力を高める。
- 成人男性では推奨量0.8~0.9mg/日、耐容上限量7mg/日。成人女性では推奨量0.7mg/日、耐容上限量7mg。
- 欠乏症には、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、骨異常、成長障害、心血管系や神経系の異常、毛髪の色素脱失、筋緊張低下、易感染性、コレステロールや糖代謝の異常がある
- 過剰症では、肝機能障害、神経障害、精神障害、関節障害、角膜のカイザー・フライシャー輪がある。
- 甲殻類、貝類、ナッツ類に豊富に含まれる。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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