透析とカルニチン

病院栄養士の仕事

こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。

今回は透析とカルニチンの関係性についてまとめます。

 

透析をする方にとって非常に重要な栄養素であるカルニチン。

「カルニチンとはどのような栄養素なのか」「なぜ透析をする方にはカルニチンが必要なのか」まとめていきます。

カルニチンって何?

まず最初にカルニチンとはどのような栄養素なのか説明していきます。

 

カルニチンは、もともと体内に存在する必要不可欠なビタミン様物質です。

食べ物から摂取されるほか、必須アミノ酸であるリジンメチオニンによって体内で合成され、主に筋肉中に存在しています。

リジン+メチオニン→カルニチン
通常体内のカルニチンの75%が食べ物から摂取され、25%は腎臓や肝臓でつくられます。
 
カルニチンの主な働きは、脂肪酸の運搬です。
 
脂肪酸は、細胞内のミトコンドリアに運ばれ、燃焼されてエネルギーに変わります。
しかし脂肪酸だけでミトコンドリア内に入ることはできません。
このときに脂肪酸と結びついてミトコンドリア内に脂肪酸を運ぶ「運び屋」の働きをしているのがカルニチンです。
 
このような働きからカルニチンは、ダイエットサプリメントとしても非常に注目されています。
 
カルニチンは、赤身のお肉に豊富に含まれています。
また、魚や乳製品にも含まれています。
野菜にはほとんど含まれていません。
 

透析って何?

では次に透析について確認していきます。

 

腎臓の機能が正常の10%以下に低下すると、尿から老廃物や水分が適切に排泄されなくなります。

その結果、通常は尿中に排泄される尿素やその他の廃棄物が、血液中に残ってしまうことでさまざまな全身症状を来します。

この状態を尿毒症といいます。

尿毒症の症状には、次のようなものがあります。

<尿毒症の主な症状>

  • 視力、知覚の低下
  • 痙攣
  • 睡眠障害
  • 咳、呼吸困難感(肺に水がたまる)
  • 腎性貧血
  • カリウムの上昇
  • 尿量減少
  • 食欲低下、吐き気
  • 疲れやすい、だるい

尿毒症にならないためには、本来腎臓が行っている老廃物や余分な水分を除去する働きを、腎臓に代わって行うための治療が必要になります。

それが透析療法です。

透析療法には血液透析腹膜透析の2種類の治療法があります。

 

血液透析療法・・・機械に血液を通し、血液中の老廃物や不要な水分を除去し、血液をきれいにする方法

腹膜透析療法・・・お腹の中に透析液を入れ、自分の腹膜を利用して血液をきれいにする方法

透析をするとなぜカルニチンが欠乏するの?

では透析をするとなぜカルニチンが欠乏するのでしょうか?

透析によるカルニチン欠乏の原因は大きく3つ挙げることが出来ます。

 

①透析による除去1回の透析によって血液中のカルニチンの70~80%が除去されてしまう。
②食事制限による摂取量低下食事制限によって食品からのカルニチン摂取が少なくなる。
③腎臓での合成低下腎臓の機能低下により、腎機でカルニチンがつくられにくくなる。

腎臓病の食事療法のポイントとして、たんぱく制限があります。

たんぱく質をたくさんとると腎臓に負担がかかるからです。

たんぱく質は制限しなければいけないのに、肉魚に多く含まれるカルニチンは積極的に摂らないといけない・・・

腎臓食の難しいところです。

カルニチンが欠乏するとどのような症状がでるの?

透析患者さんに多くみられるカルニチン欠乏症は、骨格筋・心筋の機能障害、腎性貧血に関わっています。

カルニチン欠乏:筋肉症状

カルニチン欠乏による主な筋肉症状は

・足のつり

・足の痙攣

・こむらがえり

等です。

<筋肉症状の推定メカニズム>

  1. カルニチンの不足
  2. 血中・筋細胞内のカルニチン濃度が低下する
  3. 筋細胞内でエネルギー源が脂肪から糖やたんぱく質に切り替わる
  4. 十分なエネルギー産生が行われず、細胞一つひとつの負荷が大きくなる
  5. 筋肉症状の出現

カルニチン欠乏:心病変

カルニチン欠乏による主な心病変の症状は、

・心機能の低下

・血圧低下

・息切れ

等です。

 

透析患者さんでは、心病変のリスクが大きいとされています。

透析患者さんの死亡原因を示したデータによると、心不全による死亡がトップとなっており、心不全、脳血管障害、心筋梗塞を合わせた心血管疾患の割合は、全体で37.7%(★)を占めています。

死亡原因(2014年)
心不全 ★26.3
感染症20.9
悪性腫瘍9.0
脳血管障害 ★7.1
心筋梗塞 ★4.3

 

<心病変の推定メカニズム>

  1. カルニチンの不足
  2. 血中・筋細胞内のカルニチン濃度低下
  3. カルニチン代謝異常、心筋細胞の脂肪酸代謝障害
  4. 心病変(心収縮力低下を伴う心肥大・透析時不整脈・運動耐容能低下)

カルニチン欠乏:腎性貧血

カルニチン欠乏による主な腎性貧血の症状は、

・貧血

・立ちくらみ

・めまい

等です。

<腎性貧血の推定メカニズム>

  1. カルニチンの不足
  2. 赤血球膜安定性に関する酵素(CPT、LAT)の活性低下
  3. 赤血球膜代謝異常、赤血球形能異常
  4. 赤血球破壊の亢進(溶血)
  5. 腎性貧血

透析患者さんのカルニチン補給方法は?

ここまでで透析患者さんはなぜカルニチンが欠乏するのか、又不足したらどのような欠乏症が出るのかを確認してきました。

それでは、透析患者さんはどのようにカルニチンを補給すればよいのでしょうか?

 

カルニチンを多く含む食品は、赤身の肉・魚、貝類、乳製品などです。

 

しかし腎臓病の食事療法をしている患者さんは、これらの食品をたくさん摂りすぎてしまうと、たんぱく質をはじめとした制限が必要な栄養素の過剰摂取につながるため、望ましくありません。

カルニチンを食品のみで十分に摂取するのはなかなか難しいのです。

 

ではどのようにカルニチンを摂取すればよいのか?

 

答えは医師に薬として処方してもらう事です。

 

これが一番です。

カルニチンはサプリメントなども豊富にありますが、透析患者さんにおいては体の状態をしっかり確認したうえで必要な量を適正に補充することが大切です。

このコントロールは自分では出来ないでしょう。

医師にしっかり確認したうえで必要性に応じて対応してもらいましょう。

 

また腎臓病の食事制限をしている方は、たんぱく質やリン、カリウム、塩分、水分などを制限するあまり、カルニチンの不足のみでなく、エネルギー自体が不足してしまいやすいという問題点もあります。

必要なエネルギーはしっかり摂取するよう意識して食事をとることが大切です。

腎臓病の食事療法では、三大栄養素のたんぱく質を制限するかわりに糖質・脂質は積極的に摂取し、エネルギーが不足しないようにするというのが重要なポイントになります。

 

医師、管理栄養士にきちんと相談しながら適正な食事療法を行っていきましょう。

 

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