
こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。
今回は、いよいよ令和2年6月から施行された「HACCPに沿った衛生管理の義務化」について説明しています。
HACCPの義務化については、

- 施行されるのは聞いているけど、結局何が変わるの?
- 何から準備したらいいのかわからない!
といった声ををよく聞きます。
HACCPについての知識を確認し、何が必要なのか考えていきましょう。
今回の内容は、病院でのHACCP導入を中心に説明していきたいと思います。
それではいきましょう!!
食品衛生法の改正

なぜHACCPが義務化されるのか・・・
これは食品衛生法の改定が関わっています。
食品衛生法とは、飲食による健康被害の発生を防止するための法律です。
今回食品衛生法が15年ぶりに大改正されることとなり、平成30年6月13日に公布されました。
この大改正は、食を取り巻く環境の変化や国際化などに対応するための改正であり、TOKYO 2020オリンピック・パラリンピックに向けて、日本の食品衛生管理の水準が国際的にみても遜色ないことを示すための改正といえるでしょう。
改正のポイントは7つあります。
<改正の7ポイント>
★特に事業者に影響があるもの★
では、HACCP導入について具体的に紹介していきます。
HACCPに沿った衛生管理が義務化に
前記した通り、原則すべての食品等事業者は、「HACCPに沿った衛生管理」を実施しなければなりません。
HACCP導入についての考え方には、業種・規模により2つに分かれます。
②「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」
HACCPとは
ではまずHACCPとはどのような考え方なのか、基本知識を確認していきましょう。
HACCPとは、「危害要因分析および必須管理点」という意味で、1960年代に「宇宙食」の安全管理のために開発された衛生管理手法です。
よくHACCPについて認定を受けるというイメージを持っている人がいますが、HACCPとは認定制度ではなく手法のことをいいます。
<HACCPの考え方>
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全行程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする手法であり、
食品安全性管理の可視化が重要な実行ポイントとなる。
◎食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある食品汚染の危害をあらかじめ分析する。
◎分析結果に基づき、製造工程のどの段階でどのような対策をすれば安全か重要管理点を定める。
具体的な手法は次の通りです。
一連の調理工程を書き出し、危害要因(ハザード)を把握する。
危害を回避できるような調理工程で製造する。
特に重要な部分(CCP)について管理すべき基準(CL)を決定し、常時確認して記録をとる。
病院でのHACPに沿った衛生管理とは?

では、病院でのHACCPに沿った衛生管理について確認していきましょう。
先程お話し病院は、②「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に沿った衛生管理になります。
その手順を一つひとつ確認していきましょう。
HACCPに沿った衛生管理
HACCPに沿った衛生管理は次のような流れで行われます。

衛生管理を「可視化する」ことが重要であるため、③の確認・記録が特に大切です。
まずは危害分析!リスクを知ろう
食材を仕入れ、調理し、食事を提供するまでの「食中毒等の事故につながる要因(リスク)を把握することが最初の第1歩です。
食中毒等の事故につながる要因(リスク)は次のようなものがあります。
◎アレルギー物質
◎金属異物、ガラス片など
これらのリスクに対してどのような対応方法があるのかあらかじめ確認しておきましょう。
食材 | 主なリスク | 対応方法 |
肉 | 病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター | 中心部75℃1分間以上加熱 |
卵 | サルモネラ | 中心部70℃1分間以上加熱 |
魚 | 腸炎ビブリオ | 中心部60℃10分間以上加熱 (生食)4℃以下で保存 |
アニサキス | -20℃24時間以上冷凍 | |
二枚貝 | ノロウイルス | 中心部85~90℃90秒間以上加熱 |
加熱調理食品 | ウェルシュ菌 | 長時間室温放置しない、直前にしっかり加熱 |
要冷蔵品 | あらゆる微生物 | 10℃以下で保存 |
要冷凍品 | あらゆる微生物 | -15℃以下(または製品表示に従って)で保存 |
手指 | あらゆる微生物 | 手洗い、消毒の徹底 |
調理器具 | あらゆる微生物、器具の破損による異物 | 洗浄、消毒の徹底、器具の劣化確認 |
リスクを把握してその対応方法を確認したら、リスクを回避できるように衛生管理を実施します。
病院での食事提供業務を確認すると、
②調理従事者の準備
③材料の準備
④調理
⑤提供
⑥片づけ
衛生管理計画書の作成
リスクの確認が出来たら、それを踏まえて衛生管計画書を作成します。
これは、普段行っている衛生管理をマニュアル化するという事です。
一般衛生管理(調理以外の作業手順)と重要管理(調理の作業手順)に分けて考えていきましょう。
<一般衛生管理>
- 腐敗しているもの
- 包装が破けているもの
- 消費期限が過ぎているもの
- 保存方法が守られていないもの
- 冷蔵、冷凍庫の温度は記録する
- 冷凍庫の霜取りも適宜行う
- まな板、包丁は肉、魚、野菜で使い分け
- 加熱せずに提供する食品を最初に調理
- 生肉、生魚はしっかり包装し、専用冷蔵庫で保管。難しい場合は、冷蔵庫の最下段で保存
- 洗剤は専用の容器に入れること
- 消毒液は消毒に有効な濃度のものを使用する
- 清掃時は清掃用作業着に着替えること
- ドアノブ、水洗レバー、便座も清掃すること
- 調理従事者が下痢をしていると手指などを介して食中毒が発生する危険性があります。
- 手指に切り傷などがある場合や汚れたままの作業着着用は、食品が有害微生物に汚染される可能性があります。
- 装飾品のはずし忘れは、異物混入の原因になります。
- 手袋の着用前にも必ず手洗いをする。
- 正しいタイミングと方法で手を洗う。
<重要管理>
メニューごとにリスクを排除するための調理方法を決めます。
メニューは3つのグループに分類されます。
- 10℃以下になるように速やかに冷蔵庫へ
- 調理後、汚染がないように注意する
- 中心温度85℃90秒以上の加熱
- 調理後、汚染がないように注意する
- 加熱後熱いうちに提供する。60℃以上で保管する。
- 速やかに冷却できるように工夫する
- 再加熱は、かき混ぜて十分に加熱する
計画に基づく実施(調理)
衛生管理計画書を作成したら、計画に基づき実施します。
大切なのは、危険温度帯に注意することです。
危険温度帯とは、調理の過程で食中毒を引き起こす有害な微生物が装飾しやすい温度帯です。
確認・記録

実施したことを毎日確認し記録しましょう。
記録をとることには次のようなメリットがあります。
・問題が発生した場合、衛生管理を適切に実施していることの証拠書類となる
・業務の改善点が見え、効率化できる
◎記録は1年間保管しましょう。(病院は3年間)
何か問題が起こった場合に記録を確認することもあるので、しっかり保管します。
◎定期的に記録の確認をしましょう。
定期的に記録を確認し、衛生上気づいたことなど、同じような問題が発生した場合は、同一の下人が考えられるので、対応を検討しましょう。
まとめ
今回は食品衛生法の改正に伴うHACCPの導入について病院での対応を中心に確認しました。
私も最近は色々意識してHACCPの情報収集を行っていますが、そんなにこわがらなくても大丈夫だと思います。
多くの施設は、大量調理施設衛生管理マニュアルに基づいた、もしくはそれを基に作成した自施設独自の衛生マニュアルに沿った衛生管理をすでに行っているかと思います。
必要な記録さえとっていれば、特に大きな対応の変更をしなくても

HACCPに沿った衛生管理をしてますよ!
と自信をもって言えると思います。
まずは普段行っている衛生管理がきちんと記録されているかをきちんと確認し来るHACCP導入の日に備えましょう。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/haccp_shien/index.html
こちらの資料は、厚生労働省から「小規模な飲食店事業者向けHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」の内容に合致しているとお墨付きをもらっているものになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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