輸液を学ぶ 輸液早見表を理解する為に知っておきたい基礎知識

病院栄養士の仕事
てんぱぱぱ
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こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。

皆さんは、輸液についてきちんと理解していますか?

 

輸液には、色々な種類があります。

カロリーがある・ない、中心静脈・末梢静脈、塩分が高い・低い、浸透圧が高い・低い等など・・・

使用する目的・体の状態によって、選択する輸液の内容は変わってきます。

 

輸液を選択する、また成分を調べたりする時によく使うのが、輸液の組成などが一覧になった胸ポケットに入れられるリーフレットタイプの輸液早見表です。

「輸液早見表」の画像検索結果

栄養輸液を含めたくさんの輸液製剤が一覧になっていてとても便利です。

そんな輸液早見表、皆さんはしっかり使いこなせていますか?

 

栄養管理を行う上で輸液を理解していることは必須条件といえるでしょう。

輸液早見表の内容を理解し、栄養管理に活かしていきましょう。

細胞外液補充液と維持液

まずは、輸液な大きな分類分けとして、細胞外液補充液維持液があります。

違いはナトリウムをどのくらい含んでいるかという事です。

血液の成分に似ており、血液量を増やしたい時に使うのが細胞外液補充液です。

出血や脱水などにより、体液の中で最も喪失されやすいのが細胞外液ですので、それを補いたい時には細胞外液補充液が選択されます。

最初に開発されたのはナトリウムとクロルつまり食塩だけを含んだ「生理食塩水(生食)」です。

食塩量は100ml当たり0.9g、つまり0.9%食塩液です。

その後、カリウムやカルシウムなどほかの血液成分を加えたリンゲル液が出来ました。

また、これだけではクロルイオンが多く体が酸性に側に傾く為、乳酸イオンや酢酸イオン、最近では重曹が加えられています。

手術や外傷で出血した場合に血液成分の代わりに用いられ、血圧が下がらないように使われます。

 

500ml投与すると食塩が約4.5gも投与されることになるため、心不全では肺水腫になったり、腎不全や肝不全では浮腫や腹水を助長しかねなかったりするため注意が必要です。

細胞外液補充液

  • 血液の電解質組成に最も近いように作られている。
  • ナトリウムを多く含む
  • 血液の成分に似ており、血液量を増やしたい時に使う。
生理食塩液血漿の電解質をすべてナトリウムに置き換えた輸液
リンゲル液生理食塩液のナトリウムを減量し、カリウムやカルシウムを配合
乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液・重炭酸リンゲル液リンゲル液をベースに乳酸、酢酸、重曹などを配合

 

一方、維持液はその名のとおり、食事がとれない方の水分やナトリウムを維持するために使われます。

水分は成人で1日約2L必要なため、維持液を2Lでほぼ1日に必要な水分やナトリウム、カリウムなどを補充できます。

維持液には、1~4号液があります。

維持液

  • 食事がとれない方の水分やナトリウムを維持するために使われる
  • 1号液~4号液と種類が分かれている。
  • ナトリウムは細胞外液補充液ほど多くない
  • 1号液→4号液になるほどナトリウム濃度は下がる
1号液(開始液)病態不明時の水・電解質補給のための点滴開始液。Kを含まない
2号液(脱水補給液)水分・電解質欠乏時の内液・外液の是正。細胞内に多い電解質のカリウムやマグネシウムを多く含む
3号液(維持液)経口摂取不足時の基本的な維持液。1日に必要な水・電解質を補給できる。もっともよく使われる
4号液(術後回復液)水分欠乏時の水分補給。電解質濃度が低く、細胞内への水補給効果が大きい

 

輸液の種類と特徴

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末梢静脈栄養剤

末梢静脈栄養剤とは、腕などの末梢静脈から点滴投与することを主な目的とした、糖質・電解質・アミノ酸などを含む輸液のことをいいます。

末梢静脈栄養剤の項目で注目したいのは、浸透圧比やPHです。

生理食塩液は前途したように0.9%食塩液です。抗生物質など医薬品を溶解する場合などに汎用されます。これは血液の浸透圧に近いため、血管に障害を与えにくいためです。

一方、浸透圧が高くなればなるほど末梢血管に障害を生じやすくなるため、投与できる輸液の浸透圧はおおよそ生理食塩液の「3倍」までとなります。

反対に「蒸留水」という「ただの水」を含む輸液もあり、浸透圧は0です。

これも血管にとっては負担になり、浸透圧の高いものよりも血管障害性が高く、ほとんど使われません。

輸液の浸透圧は溶けている分子の数に比例します。

5%ブドウ糖(100mlでブドウ糖を5g含むため20kcalになります)の生理食塩液との浸透圧比は約1ですが、15%のブドウ糖液で考えると浸透圧比は3倍になります。

栄養をたくさん入れたい時には15%の高い濃度のブドウ糖を使いたくもなりますが、末梢血管に障害を生じ、患者さんも疼痛を訴えることが多く、生食との浸透圧を約「3」とした末梢静脈栄養剤は、1日2500mlが最大投与量となります。エネルギーにして約1050kcalにしかなりません。

したがって末梢静脈栄養剤だけで栄養管理できるのはせいぜい2週間程度となります。

また血液のPHは7.4ですが、血液のPHより高くても低くても血管に障害を生じやすいため注意が必要です。

末梢静脈栄養剤使用時のポイント

  • 末梢静脈栄養剤とは、腕などの末梢静脈から点滴投与することを主な目的とした、糖質・電解質・アミノ酸などを含む輸液である
  • 浸透圧が高くても低くても血管障害や疼痛の原因となる
  • 投与できる輸液の浸透圧はおおよそ生理食塩液の「3倍」までとなり、1日2500mlが最大投与量となる
  • 末梢静脈栄養剤のみで必要栄養量を摂取するのは難しいため、末梢静脈栄養剤のみでの栄養管理は2週間程度が目安となる
  • 血液のPHである7.4より高くても低くても血管に障害を生じやすい

 

脂肪乳剤

脂肪乳剤は、精製ダイズ油を卵黄レシチンで乳化し、等張化剤として注射用グリセリンを配合したものです。

必須脂肪酸の補給や効率の良いエネルギー源として用いられます。

白濁している珍しい輸液です。

通常、注射薬は無色透明で、中身が混濁していないか確認できるようになっています。このため脂肪乳剤にほかの輸液や注射薬を加えることはありません。

浸透圧比は血液とほぼ等張(浸透圧比=1)となっているので、末梢血管からの投与も可能です。

日本人における投与速度の上限は、0.1g/kg/hrとされており、ゆっくり投与することが大切です。

栄養管理上の注意点として、100ml中に約70μgのビタミンK1を含むため、ワルファリンの効き目を抑えてしまう可能性があります。

また脂肪を乳化させるためにリン脂質(レシチン)を含み、20%イントラリポス100ml中におよそ50mgのリンを含まれているため、腎機能障害では、リンの排泄遅延には要注意です。

脂肪乳剤

  • 必須脂肪酸の補給や効率の良いエネルギー源として用いられる
  • 浸透圧比は血液とほぼ等張(浸透圧比=1)であり、末梢血管から投与可能
  • 日本人における投与速度の上限は、0.1g/kg/hrとされている
  • ビタミンK1によるワルファリン効果抑制や、腎機能障害者でのリン排泄遅延に注意が必要。

 

アミノ酸輸液

アミノ酸輸液は、三大栄養素のタンパク質源として用いられ、次の5つに分類されます。

①総合アミノ酸輸液
②侵襲時アミノ酸輸液
③肝不全用アミノ酸輸液
④腎不全用アミノ酸輸液
⑤新生児・小児用アミノ酸輸液

 

輸液早見表のアミノ酸輸液の項目にはE/N比フィッシャー比などが載っています。

  • E/N比:9種類の必須アミノ酸(E)と11種類の非必須アミノ酸(N)の割合
  • フィッシャー比:分岐鎖アミノ酸(BCAA:イソロイシン、バリン、ロイシン)と芳香族アミノ酸(AAA:チロシン、フェニルアラニン)の割合

 

①総合アミノ酸輸液

アミノ酸製剤はもともと、卵や人乳のE/Nが約1であり、この割合が最も優れたアミノ酸組成との考えからつくられたものです。

その為、総合アミノ酸輸液はE/N比が約1となっています。又分岐鎖アミノ酸(BCAA)は約22%に調製されています。

 

②侵襲時用アミノ酸輸液

BCAAは30~36%と高く、必須アミノ酸を増量し(E/N比1.3~1.7)、グリシン・グルタミン酸・アスパラギン酸など過量投与で毒性となるアミノ酸を減量していて、侵襲時に有用です。

高カロリー輸液が必要な患者さんには多少の侵襲があるため、侵襲時用アミノ酸輸液がキット製剤としてよく使われます。

 

③肝不全用アミノ酸輸液

肝性脳症ではBCAAの血中濃度が低く、芳香族アミノ酸・メチオニン・トリプトファンの血中濃度が高いという特徴的なアミノ酸パターンを示します(フィッシャー比は低い)。

フィッシャー比の高い肝不全用のアミノ酸輸液は、体内のアミノ酸不均衡を是正して肝性脳症時に用いられるアミノ酸製剤です。

肝性脳症に対して、BCAA含量が多く、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンの含量が少なく、チロシンを含まない特殊組成となっており、意識障害の改善効果があります。

栄養改善が目的ではない点に注意が必要です。

 

④腎不全用アミノ酸輸液

腎機能を維持し尿毒症の改善を図りつつ、栄養改善・維持を目的に使用します。

腎不全では腎臓でのアミノ酸代謝が障害され、また治療としての蛋白質摂取の制限により血中必須アミノ酸(特にBCAAとスレオニン)が低下し、ヒスチジン、チロシン以外の非必須アミノ酸は高値を示していることが多い。

安全性、有効性を考慮して、必須アミノ酸を中心に最低限の非必須アミノ酸を配し、E/N比は2.6、BCAA含有量は42~46%と高くなっています。

 

⑤小児用アミノ酸輸液

新生児、乳児及び1~3歳の幼児におけるアミノ酸補給に用います。

この時期はアミノ酸代謝能が未熟なことから、成人用アミノ酸輸液を用いると、特定のアミノ酸が過剰や欠乏を来すことが懸念されるため、小児用アミノ酸輸液が開発されました。

BCAAの配合比は39%と高く、脳・神経、網膜組織の発育に必要で母乳に多く含まれているタウリンを配合し、チロシン、システイン及びアルギニンを増量しています。

小児では過量投与により脳障害や成長障害を起こすおそれがあるメチオニン、フェニルアラニンを減量し、さらに高アンモニア血症や成長障害が懸念されるグリシン、スレオニンを減量しています。

 

アミノ酸輸液

三大栄養素のタンパク質源として用いられ、目的に応じて使い分けられている。

①総合アミノ酸輸液EN比が約1、BCAAは約22%
②侵襲時アミノ酸輸液E/N比1.3~1.7、BCAAは30~36%と高い
③肝不全用アミノ酸輸液BCAA含量が多く、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンの含量が少なく、チロシンを含まない
④腎不全用アミノ酸輸液E/N比は2.6、BCAAは42~46%と高い
⑤新生児・小児用アミノ酸輸液BCAAは39%と高い。特定のアミノ酸の過剰や欠乏が起きないよう調整されている

高カロリー輸液製剤

高カロリー輸液製剤は、消耗性疾患や消化器疾患などで長期間経口摂取が出来ない時の栄養補給に使用します。

高濃度のブドウ糖を含むことが多く、中心静脈からの投与が原則となります。

高カロリー輸液用基本液(糖質・電解質液)を基本に、アミノ酸・ビタミン・微量元素・脂肪乳剤などを配合して製品化したのがキット製剤です。

高カロリー輸液は以前、基本液にアミノ酸製剤を混合して使用直前に調製していました。

これは糖質とアミノ酸を混合後、しばらく経過するとメイラード反応が生じて輸液が茶色になってしまうためです。

高カロリー輸液キット製剤は糖質とアミノ酸が隔壁で分けられていて、使用直前に隔壁を開通することによってこの問題を解決しています。

高カロリー輸液製剤は1号、2号などと数字が増えると、主に糖質とアミノ酸量が変わります。

基本の考え方としては、1号液は中心静脈栄養の導入・離脱期などに使用し、2号液からは維持期に使用されます。

糖質や脂肪量を合算した熱量であるNPC(ノンプロテインカロリー)を分子として、アミノ酸のみに含まれる窒素を分母にすると、この比が150くらいとするのが適切な3大栄養素の摂取比率となります。

この比を一定にするために、糖質が増える分、窒素を含むアミノ酸量も変化しています。生食との浸透圧比はいずれも4以上となっていて末梢血管からは投与できません。

血流が豊富で輸液の浸透圧を早く希釈できる中心静脈という太い血管から投与されます。

高カロリー輸液製剤

  • 消耗性疾患や消化器疾患などで長期間経口摂取が出来ない時の栄養補給に使用する
  • 高濃度のブドウ糖を含むことが多く、中心静脈からの投与が原則となる
  • 高カロリー輸液用基本液(糖質・電解質液)を基本に、アミノ酸・ビタミン・微量元素・脂肪乳剤などを配合して製品化したキット製剤がある
  • 1号液は中心静脈栄養の導入・離脱期などに使用し、2号液からは維持期に使用される
  • NPC/N=150程度が適切な三大栄養素の摂取比率となる

総合ビタミン剤と微量元素

輸液早見表にはビタミンを13種類含む総合ビタミン剤や微量元素製剤も掲載されています。

ただし微量元素製剤は5種類の微量元素しか含んでいないため、長期に静脈栄養のみで管理する場合、セレンやクロム、モリブデン、コバルトといった微量元素の不足には注意するべきです。

総合ビタミン製剤に含まれる13種のビタミン
ビタミンA、D、E、K、B1、B2、B6、B12、C、ニコチン酸アミド、パントテン酸、葉酸、ビオチン

 

微量元素製剤に含まれる5種の微量元素
Fe、Mn、Zn、Cu、I

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