実は危険?!お粥の離水を考える

病院栄養士の仕事

こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。

 

急ですが、お粥を食べているときに食事の終わり頃になると、

水分だけ残っちゃってるな・・・

って事ありませんか?

 

実はあの状態、嚥下障害がある方には非常に危険なんです。

 

今回はお粥に潜む問題点について、「なぜお粥の離水が危険なのか」「どのように対応したらよいのか」について考えていきます。

 

それではいってみましょう。

お粥に潜む問題点

まず、最初にお粥には、どのような問題点・課題があるのかを考えていきます。

 

在宅で見落とされがちなお粥の問題。

お粥は日常的な食べ物であり、高齢者にとってはよく食べる食事になります。

 

高齢者では、歯の問題を抱えている方が非常に多くいます。

歯が少なくなってしまう、入れ歯が合わなくなってしまうなど咀嚼を十分に行うことが出来ない方は、固いものが食べにくくなってしまう為、主食もご飯からお粥に変えて対応する人が多いです。

 

しかし、お粥は炊き上がりの状態がまちまちで、調理方法、水分量、お米の種類、季節など様々な因子に影響され、物性が左右されてしまいます。

 

その幅が大きいというのが、お粥の弱点なのです。

 

さらに、保存方法や時間経過によって付着性や凝集性も変化してしまいます。

 

また「唾液アミラーゼの影響を受ける」という問題もあります。

 

唾液アミラーゼとは、炭水化物を消化するための唾液腺から分泌される口腔内で働く酵素です。

 

お粥を食べる時にスプーンに付着した唾液中のアミラーゼがお粥を分解してしまい、離水が生じてしまうのです。

 

離水したお粥は本来あるべきとろみが失われた状態であり、作りたてのお粥とは違う状態になってしまいます。

 

なぜ、離水すると危険なのか?

 

それは、物性が違うものを同時に食べると食べ物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥を起こしやすいからです。

 

摂食嚥下障害(噛んだり飲み込んだりする力が低下している状態)の方に食事を用意する時に重要となる物性のポイントがあります。

大きくまとめると、硬さ,粘度,付着性,凝集性(まとまりやすさ)です。

摂食嚥下障害患者が食べやすい食品とは、

①適度な粘りをもち、咀嚼した際に口腔内でバラバラにならず食塊形成がよく硬さが均一なもの
②喉頭蓋(飲み込む際に気管をふさいでくれる蓋のようなもの)の隙間から気管に入り込みにくく咽頭喉頭に残留しにくいもの

です。

これらの考えから嚥下食に必要な物性として、次に示す4つの条件が挙げられます。

1.食材の密度,大きさや硬さが均一である食べ物

食材の大きさや硬さが均一でないと噛み砕いたり、飲み込みやすい塊にまとめることが難しい。

→調理に用いる食材は大きさを揃えて同じ軟らかさになるまで炊き込むことが重要。

2.適度な粘度と凝集性を有する
食塊形成しやすく、飲み込みやすい粘度・凝集性である。

→咀嚼後、口の中や飲み込むときにバラバラになりやすい食品は、あんかけにしたり、トロミ剤・ゲル化剤を使用したりする。又元々とろみがついているようなトロロなどを使ってもよい。

3.飲み込むときに変形し滑りがよい
飲み込む時に変形せず滑りが悪いものは、嚥下しにくく、窒息の原因にもなる。

→トロミ剤などを上手に活用する。固い食材は控える。

4.付着性が少ない
付着性とはくっつきやすさを示している。口腔内や咽頭にはりつきやすいものは、嚥下機能が低下している場合には飲み込むことが難しい。

→適度な水分や脂肪分、とろみを加えて仕上げる。

物性について日本摂食嚥下リハビリテーション学会がまとめた「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」にも、均質・付着性・凝集性・固さというポイントが用いられています。

●ヘルシーネットワークから引用

それを踏まえて離水したお粥について考えていきましょう。

 

離水したお粥は、お粥の粒とサラサラした水分が混在している食事になります。

これは、硬さ,粘度,付着性,凝集性が均一ではないということです。

 

嚥下障害の方では、お粥を咀嚼し、食塊形成(飲み込みやすい形にする)する段階で、飲み込もうとしていない時に水分だけ誤って飲み込んでしまい、誤嚥してしまうのです。

 

これをいかに防ぐかが、お粥を安全に食べるポイントになります。

では次に、どのようにしてお粥の離水を防いでいくのかを考えていきましょう。

お粥の離水の防ぎ方

離水を防ぐ方法はいくつかあります。

基本的な調理時の注意点から応用編までご紹介していきます。

 

①お粥を炊く際の水分量に注意する。

 

これは基本中の基本ですね。

炊くときの水分量が多いと、炊き上がった時に水分が残った状態になってしまいます。

水分が多く残っていれば、物性が均一ではない状態に出来上がってしまい、誤嚥の危険性を高めてしまいます。

水分量をしっかり調整することが大切です。

 

又しっかり蒸らすという事も大切です。

蒸らすことで十分にお米が水分を吸ってくれますので、離水を防ぐことが出来ます。

 

②蒸らした後は、水分を加えない。

これも基本中の基本です。

特に大量調理時によくやってしまいがちな失敗なのですが、盛り付けをしている最中に「お粥が固すぎるなー」と判断して足し湯をしてしまう人がいます。

 

特に大量調理では一度にたくさんのお粥を用意しますので、盛り付けている途中で物性が変化し、固く感じることはよくあります。

又、お粥の水分が少ないとお粥を盛り付ける時にお玉からお粥が離れにくく、盛り付けに時間がかかるのも足し湯をしてしまう一つの要因となっています。

 

しかし当然途中で足し湯をしてしまえば、その水分はお粥に十分に吸収されず離水してしまいます。

当たり前なようですが、ありがちな判断ミスになりますので注意しましょう。

 

どうしても足し湯をしなければならない時は、お湯を足した後可能であれば再度十分に蒸らして対応します。

ただ盛り付け時間を考えると、再度蒸らす十分な時間が確保できない事の方が多いと思います。

 

そのような時は、適量のトロミ剤を使用するのも一つの手段だと思います。

離水を防ぐというよりは、離水した水分にトロミを付けることでお粥となじませるイメージです。

応急処置的な方法としては使えると思います。

 

③唾液アミラーゼの問題を解消するには、専用の商品を!

これ応用編です。

①、②の基本的な問題解決により、お粥はきれいに盛り付けることができるかと思います。

しかし、食べている途中で生じる唾液アミラーゼによる離水は防ぐことが出来ません。

この離水を防ぐためにはどうしたらいいのか・・・

 

実は、唾液アミラーゼの影響をうけにくくする商品があるんです。

それは、おかゆケアスル―です。

 

以下販売業者のキッセイ薬品による商品紹介です。

「おかゆケアスルー」は、おかゆに混ぜることで離水(固形分と水分が分離すること)や、べたつきをおさえ、温かいおかゆはもちろんのこと、冷めたおかゆでも、やわらかく調整することができます。

 おかゆは、従来から病者食・介護食として広く用いられています。その一方で、おかゆには、スプーンなどを介して唾液が混ざることにより、唾液中のでんぷん分解酵素の影響などで離水が生じ、むせや誤嚥のリスクが高まる、あるいは、冷めるとでんぷんの成分がかたくなり食べにくくなるなどの課題があります。このため、食べて飲みこむという「摂食嚥下」の機能が低下した方にとって、おかゆは、必ずしも食べやすい食品ではありませんでした。

 「おかゆケアスルー」は、このような課題を解決するために、おかゆに混ぜる粉末状の調整食品として開発されました。本製品は、でんぷん分解酵素と増粘成分とをバランスよく配合しており、酵素のはたらきによりおかゆのべたつきやかたさを調整し、増粘成分が離水を防ぎ適度なとろみをつけることで、炊きたてのようなやわらかさに調整することができます。

《おかゆケアスルー 概要》


名称  :おかゆ調整食品
原材料名:デキストリン(国内製造)、食塩/増粘多糖類、酵素
内容量 :1kg
賞味期限:1年
保存方法:直射日光・高温多湿を避け、常温で保存してください
希望小売価格:5,400円(税込)
発売日 :2019年10月7日
製品紹介:URL:https://healthcareinfo.kissei.co.jp/product/nursing/product_0105.html



《おかゆケアスルーの特長》
①唾液による影響を抑え、離水に配慮したおかゆに調整できます。
②おかゆのべたつきやかたさを調整できます。
③温かいおかゆや冷たいおかゆも、温度を気にせず調整できます。


《使用方法》
粒のあるおかゆ(全粥)に対して
①おかゆに「おかゆケアスルー」をふりかけてください(添加の目安量:おかゆ重量の1~1.5%)。
②スプーンで、お米の粒をつぶさないようにやさしく20回ほどまぜてください。
③物性が安定するまで30秒ほど置いた後に召し上がってください(長時間放置すると、酵素により甘みを感じ、ゆるい物性になりますのでご注意ください)。


ミキサー粥に対して
おかゆに「おかゆケアスルー」をふりかけ、ミキサーで十分に撹拌してください(添加の目安量:おかゆ重量の1.5~2%)。
※1 数値は目安となりますので、召し上がる方の状態をみて添加量を調整してください

 

このように、おかゆケアスル―を使用することで、でんぷん分解酵素と増粘剤の2つの役割を果たすため、手軽に安全なお粥をつくることができます。

 

お粥を安全な食事に変化させる素晴らしい商品だと思います。

 

しかし、問題点もあります。

 

それは、価格が高いということです。

 

私も実は自分の職場でおかゆケアスル―の導入を検討したのですが、コストがかかりすぎてしまう為断念しました。

 

私の施設では、70食程度のお粥を1食の食事で用意します。

その量炊き上がりで、約20000g!

 

おかゆケアスル―は炊き上がりのお粥に対して1.0~1.5%が使用の目安量となっています。

20000gのお粥に必要なおかゆケアスル―の量は、1.0%で計算すると、1食に対して約200g。

 

1kg5400円の商品ですので、1日3食の使用で必要な食材量費は、

5400円/㎏×0.6㎏=3240円

1人あたり1日の食材量費は、

3240円÷70人=46円

 

1人あたりの1日の食材料費を46円底上げする・・・

これけっこう痛いんですよね。

 

私は価格面で採用をあきらめている現状ですが、これはあくまで大量調理の場合です。

家で1人前をつくるのに使用するのであれば、現実的な金額設定ではあると思いますので、お粥で頻繁にむせ込んでしまうような、誤嚥のリスクが高い方は使用するといいと思います。

 

高齢化が進み、嚥下障害の方はどんどん増えていくことが予想されますので、私も「高いから使えない」とか言ってられなくなる未来が来るかもしれません。

 

集団調理で採用を検討する時は、食材料費のことも考えながら導入方法を考える必要がありますが、商品自体は今の時代のニーズにあった素晴らしいものだと感じています。

まとめ

今回は、お粥の離水の問題点とその解決方法についてまとめました。

 

時代は高齢化社会で、高齢者に必要な商品は次々と出ています。

新しい商品の情報をしっかり把握しながら、必要なものをしっかり取り入れていくことで、より安全な食事提供が実現できます。

 

まずは基本的な調理方法での対策が一番大切だと思いますが、それでカバーしきれない問題がある時は、それを補うことが出来る商品を試してみるのも大切だと思います。

 

新しい情報を常に収集し必要性のあるものを選択できるという事は、栄養士に必要なスキルといえるでしょう。

価格のことをごねてしまいましたが、一番優先されるべきは「食事をする方の為に」という事。

 

いつまでも食事が楽しみのひとつであり続けられるよう、美味しくて安全な食事提供に努めていきましょう。

 

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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