こんにちは。管理栄養士のてんぱぱぱです。
今回はたんぱく質の摂り方について、肉対豆についての研究抄録についてご紹介します。
この研究は、肉対豆の対決を循環器疾患死亡率で比較した内容になります。
こちらは研究抄録は、日本ニュートリション教会からの情報をもとに作成しています。

研究抄録
はじめに
血管を強くする栄養としても期待されているタンパク質。血管の老化、機能低下による循環器疾患の予防には重要とされています。
日本でも岐阜大学の研究班が大豆たんぱく、および納豆の摂取と循環器疾患死亡率を調べたコホート研究があります。
その研究でも、脳卒中による死亡のリスクは、大豆タンパク質や納豆の摂取量の多いほうから4分割して摂取上位群と下位群を比べると、摂取の多い群では脳卒中死亡リスクは、大豆タンパク質では25%、納豆では32%低くなっており、摂取が多いほど、死亡リスクが低いことが明らかとなっています。
国際疫学雑誌に米仏の研究班が8万人の食事内容と循環器疾患死亡のデータを分析した結果が掲載されましたので紹介します。
植物由来/動物由来のタンパク質の摂取状況と循環器系疾患による死亡率:Adventist Health Study-2
研究背景
これまでの研究報告によると、植物由来タンパク質および動物由来タンパク質と循環器系の健康にある複雑な関係について、その複雑性の一部を解明しうる特定の栄養クラスターと密接に関わっていることが示唆されている。
我々研究班は、疫学的手法により、特定のタンパク質の摂取状況と循環器系疾患による死亡率との関連性を評価することを目指した。
研究方法
我々は、研究コホート“Adventist Health Study-2”で追跡している81,337の男女を研究対象とした。
食品摂取頻度調査を用い、2002〜2007年の食事内容について評価した。分析対象者のタンパク
質摂取量に基づき、食事パターンは因子分析によって解析を行った。
Cox回帰分析で、背景因子や栄養素に関連するデータを補正し、危険度(HR)を推定した。
結果
追跡期間平均9.4年のあいだに、2,276人が循環器系疾患により死亡していた。
心血管死亡率のHRは、動物由来タンパク質(肉)因子については1.61 [CI:98.75%、1.12-2.32 P値<0.001]となりリスクをあげていた。
一方で、植物由来タンパク質(ナッツや種子類)因子については0.60[98.75%CI、0.42-0.86; P-trend <0.001]でリスクを低減していた。
「穀類」、「加工食品」、「豆類、果物&野菜」のタンパク質因子には有意な関連性は見られなかった。
分析対象者の循環器系疾患による死亡には、菜食主義的な食事習慣や栄養強化は結果には影響していなかった。
結論
動物由来のタンパク質「肉」と植物由来のタンパク質「ナッツ&シーズ」は、循環器系疾患による死亡へ影響が大きく、循環器の健康にとって重要とされている他の栄養素とは別の影響を及ぼしていた。
タンパク質の由来についても考慮していくべきだろう。
感想

今回の結果はあくまで循環器疾患死亡率でのみ比較した研究となるので、ここまで豆のほうがいいと結論づけるのは少し極端な気がします。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質はそれぞれにメリットがあるので「バランスよくとる」、または「身体状況や摂取状況に応じて摂り分ける」というのが一般的な考え方でしょう。
私の働いている病院は平均年齢が非常に高いという特徴があります。
患者さんの中には、食事を十分に食べられない方も多くいる為、

良質なたんぱく質の肉・魚をしっかり食べてくださいね。
とお話しすることがよくあります。
良質なたんぱく質とは、アミノ酸スコアの高いたんぱく質を意味します。
アミノ酸スコアとは、ウィキペディアでは次のように紹介されています。
アミノ酸スコアは、食品中の必須アミノ酸の含有比率を評価するための数値である。特定の食品に対し、窒素1gあたりに占める必須アミノ酸が基準値と比較してどれだけ含有されているかを評価するものである。
つまり、食事から摂取する必要がある(体内で合成出来ない)必須アミノ酸をそれぞれの基準量と比較してどのくらい含んでいるかというのを点数化したのがアミノ酸スコアです。
この点数は、最も基準量に対して量が少なかったアミノ酸(第一制限アミノ酸)の数値を評価点とします。
動物性たんぱく質は植物性たんぱく質と比べて、アミノ酸スコアが高く、効率的にたんぱく質を作り出すことが出来るため、「良質なたんぱく質」と表現されるわけです。
しかし、動物性たんぱく質にはデメリットもあります。
それが、脂質の含有量や種類です。
食事が食べれていない人ではあまり気にしなくてもいいと思いますが、過体重の方や生活習慣病の方、さらに今回のような循環器疾患などを持っている方には注意が必要です。
そのような方には、植物性たんぱく質の積極的な摂取が有効だというのが、今回の研究で再確認できたという風に考えています。
ちなみに日本人の食事摂取基準では、たんぱく質の内容だけでなく摂取量について、次のような内容を載せています。
日本人を含む調査によれば、たんぱく質の過剰摂取が糖尿病や心血管疾患の発症リスク増
加につながる可能性がある。たんぱく質エネルギー比率が20% エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMI の増加などが挙げられる。
たんぱく質と糖尿病発症リスクとの関係を認めた研究並びに、最近の系統的レビューでは、これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネルギー比率が20% エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している.
栄養士はこういったたんぱく質の摂り方について、内容や量などを個々の状態に合わせて的確に指示していくことが大切だと改めて感じました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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